独占禁止法遵守行動規範(大会社・建設業)
独占禁止法遵守行動規範(大会社・建設業)のテキスト
独占禁止法遵守行動規範
1 はじめに
当社の事業目的に即して特に注意を要する事項は、「入札談合」および「相互取引」である。以下、それらについて、具体的な行動指針を示すとともに、違反に対する社内の処置について定める。
2 入札談合
当社の役員および従業員が建設工事の入札に際し、独占禁止法違反行為を行うことを禁止し、当該違反行為があると疑われることを避けるための行動指針を以下に示す。
2-1 同業者との接触に関する一般原則
(1)原則として行ってはならない事項
① 受注予定者などの決定行為は入札談合の中心をなす行為であり、行ってはならない。
② 入札にかかる最低入札価格、受注数量、割合等を決定することを行ってはならない。
<公共入札ガイドライン>
公共入札ガイドラインにおいて、原則として行ってはならない事項として、具体的に、以下の事項があげられている。
① 当該入札について有する受注意欲、営業活動実績、対象物件に関連した受注実績などの情報交換を行うこと。
② 過去の入札における個々の事業者の指名回数、受注実績など、受注予定者選定の目安となるようなかたちで整理されたものを、入札参加予定の同業者へ提供すること、またはされること。
③ 入札に参加する同業者などの依頼に対し、設定された価格で入札に応じること。または設定価格での入札を依頼すること。
④ 入札以前に、他の入札参加者などとの間で、当該工事に関して業務発注、金銭支払いなどを約束すること。
⑤ 受注予定者の決定への参加の要請、強要などを行い、参加・協力しない同業者を業界内で差別的に扱うこと。
⑥ 個別工事に関する入札価格のほか、積算価格、利益など、競争上の重要な事項の情報交換を行うこと。
<留意点>
これらの事項については、以下の諸点に注意する。
① 同業者と直接会って話合いをすること。
② 電話による連絡、文書の交換などによって情報を交換すること。
③ 各種の同業者の会合、セミナーなどで、他社の役職員と顔を合わせる場合、これらの事項に関する話題について関与すること。
④ その情報交換が個別工事の「受注予定者」や「入札価格」に関するものであるときは、これらが入札談合につながるものであり、参画しないこと。
⑤ 工事が出件し、指名された場合、指名業者同士で会合、集会を行い、または接触すること。仮にそれらに参画する場合は、合法的で明確な目的を有するものであることを確認する。
(2)注意して行うべき事項
共同企業体により入札に参加しようとする場合、当該入札に参加しようとする同業者との間で、共同企業体の組合せに関して情報交換を行うことは、違反となるおそれがあるので、注意しなければならない。
① 共同企業体を結成する相手ではない同業者は、当該入札に関して、相互に直接的な競争関係に立つと考えられ、そのような同業者と組合せに関する情報交換を行うことは、受注予定者決定のための情報交換に転化することが多く、違反となるおそれがある。
② ただし、共同企業体の結成に際し、相手方となる可能性のある同業者との間で、個別に必要な情報を収集し、共同企業体の結成にかかる具体的な条件に関して、意見を交換し、これを設定することは問題がない。
③ 共同企業体に限らず、同業者に対して、指名競争入札にかかる指名を受けたことや、入札への参加について報告を求めることは、受注予定者の決定に伴うものとして、問題となる。
(3)原則として行ってもよい事項
競争上の重要な事項とは関係しない、合法的で明確な目的のために同業者と接触することは、原則として問題がない。
① 次のような、入札価格など、競争上の重要な事項の情報交換などを行うこと以外の、合法的で明確な特定の目的のために同業者と接触し、情報交換することは、基本的に問題がない。
・学術的・技術的な事項に関する情報交換
・環境問題対策、地域社会への貢献活動などに関する情報交換
・時短促進などのための情報交換
・建設業に関係する立法や行政などの動向についての情報交換
・懇談会などの全くの親睦
2-2 建設団体に関する一般原則
(1)原則として行ってはならない事項
各地域における建設業者団体で、合法的で明確な目的を有しない団体には原則として加入しない。
① このような建設業者団体については、当該地域において発注される工事の入札などに関して、話合いを行うことが目的であると疑われる可能性がある。
② 特に、公正取引委員会に届け出ていない団体については、独占禁止法上の届出義務違反の疑いがあり、加入しない。
(2)注意して行うべき事項
合法的で明確な目的を有する建設業者団体への加入は、原則として問題がないといえるが、実際の活動内容が入札談合につながるものでないかを吟味しなければならない。
① 各地域における建設業者団体のうち、次の条件を満たすものについては、事前に会社に届け出たうえで加入することができる。
・全くの親睦の目的、技術的・学術的事項の研究の目的など、合法的で明確な目的を有していることが明らかな団体。
・実際の活動内容が当該目的に沿ったものである団体。
② ただし、加入した場合であっても、次に指摘する場合は、以下のように対処する。
・当該団体の活動の中で、個別工事について、入札価格など競争上の重要な事項に関する話合いが行われ、入札談合につながるような活動がなされているような場合は、直ちにその場から退出し、その話合いなどに関与してはならない。
・関与することを拒否する意思を明確に示したうえで、場合によっては当該団体から脱会しなければならない。
③ 加入した団体が、入札による受注に応じた特別会員、賦課金などを徴収している場合、受注予定者の決定に伴うものとして、問題となるので注意を要する。
(3)原則として行ってもよい事項
日本土木工業協会、建設業協会などについては、原則として加入してもよい。
① これらの団体については、建設業法に定められた目的(建設工事の適正な施工の確保や建設業の健全な発達を図ること)に即したものとして、国土交通大臣または都道府県知事に届けられ、かつ、独占禁止法によって公正取引委員会に届けられている建設業者団体であり、当該目的に沿った活動を行うものとして、これらの団体の地方支部などに加入し、活動を行うことは原則として問題はない。
② ただし、万一これらの団体で、建設工事に関する入札についての話合いが行われるようなことがあれば、それに関与することは許されず、また、これが団体の活動そのものとして存在するものであれば、当該団体から脱会しなければならない。
3 相互取引
当社の役員および従業員が、相互取引において、当社の取引上優越した地位を利用することによって、専門工事業者などに対して不利益を強要し、不公正な取引方法として独占禁止法に違反する行為を防止するための行動指針を以下に示す。
3-1 工事受注のための営業活動に関する一般原則
(1)原則として行ってはならない事項
取引上優越した地位を利用して、相手方の自由な判断を抑圧し、当社への発注を余儀なくさせるような受注活動を行わないこと。
工事の受注以外についても、取引上優越した地位を利用して、相手方に不利益を強要してはならない。
① 当社が継続的に取引の相手としている企業に対し、当社の取引上優越した地位・購買力を利用して、たとえば、相手方企業から購入(専門工事業者に対する専門工事の発注を含む)の削減、もしくは購入の打切り、または購入量に影響を及ぼすことを示唆して、(購入実績を集計した図表などを示すことによって、暗に相手方企業を抑圧することも同様)当社への工事の発注を要請するようなことをしてはならない。
② 支店長、建設部長などが受注のための交渉にあたる場合、強い購買権限を有しているだけに、特に注意するほか、交渉にあたる態度も強圧的になってはならない。
③ 工事の受注を図るための相互取引においてだけでなく、たとえば、当社が施工した宅地やゴルフ場などに関して、当該宅地やゴルフ会員権などについて、発注者より購入したものを第三者に転売し、または斡旋する場合がある。
このような場合に、当社のほうが取引上優越した地位にある取引先、特に専門工事業者や資材納入業者などに対し、当社がその優越した地位、購買力を利用して、当該宅地やゴルフ会員権などの購入を要請し、購入がなかった場合、専門工事の発注量、または資材などの購入量を削減するなどを申し出、あるいは暗にほのめかすような行為を行ってはならない。
④ 近年、当社においても新規分野へ進出しているが、それら新規分野に係る商品などについても同様であり、子会社や関連会社の取扱商品についても同様である。
3-2 専門工事業者などへの発注、資材等の購入などについての一般原則
(1)原則として行ってはならない事項
専門工事業者などに不利益を強要するようなメーカー指定は行ってはならない。
① 資材などについて、当社が直接購入するのではなく、当社が材工ともで発注している専門工事業者が購入する場合において、あるいは、当社の子会社が資材などを購入する場合において、相互取引によるメーカー指定をする場合がある。
この場合、専門工事業者との契約に至る過程の中で、メーカー指定を行い、あるいはその変更を行うことによって、当初予定より高価な資材を指定し、価格面で専門工事業者に不利益を被らせるような場合が考えられるが、そのようなことはあってはならない。
② 特に、専門工事請負契約の締結後にメーカー指定などを行って、専門工事業者に不利益を与えることについては、公正取引委員会の通達(「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」8)で不公正な取引方法に該当し、同時に、建設業法にも違反するので、決して行ってはならない。
(2)注意して行うべき事項
専門工事業者などへの発注や資材などの購入についての基本的方針は、価格・品質・サービスを第一とすることである。
① 実際に、購入や発注を担当する者のみならず、購入や発注に関する指示を行う者において、たとえば、Aメーカーのほうが安価で良質であるのに、Aメーカーの当社への工事発注が少ないことや、AメーカーのライバルであるBメーカーの当社への工事発注を促すため、もしくは、Bメーカーの当社への工事発注のお礼として、Bメーカーから購入しなければならないことを理由に、Aメーカーからの購入や発注を断るような行為は慎まなければならない。
3-3 任意の取決めに基づいて行う相互取引
当社と相手方企業との間で、優越的地位の濫用による強制や拘束がなく、相互に任意に取り決めて、当社は相手方企業の資材などを購入し、相手方企業は当社に工事を発注するという合意に基づいて行う相互取引であれば、不公正な取引方法に該当する懸念は少ない。
4 社内の独占禁止法遵守体制
(1)届 出
次の①から④までに定める事項については、所属する各部門の管理部門(本社・各社・各本部にあっては各本部の管理部門、各支店等にあっては各支店等の管理部門、ただし、営業については本社・支店などとも建築営業本部、または土木営業本部営業管理部)にこれを届け出なければならない。
① 建設業者団体への加入に際しては、その団体名、団体の活動目的、団体の構成員、加入する理由。
② 加入している建設工事業者団体の活動が、独占禁止法およびその関連法規に違反するおそれのあるときは、その旨。
③ 同業者との会合などへの参加については、会合の目的、会合などへの参加者、参加する理由、行われた会合などの内容、受領した文書および提出する文書など。
④ 受注活動などにおいて、当該活動が相互取引に該当し、かつ、それが独占禁止法およびその関連法規、またはこの規範に違反するおそれがあると判断されたときは、その旨。
(2)届出に対する対応
各部門の管理部門は、(1)の届出があった場合、ならびにその他独占禁止法およびその関連法規、またはこの規範に違反するおそれがあると判断した場合は、同法の趣旨およびこの規範に則って、団体への加入、または不加入の決定、団体からの脱退、会合などへの不参加、取引の中止などの、適切な措置を講じなければならない。
(3)疑 義
独占禁止法およびその関連法規、ならびにこの規範の内容、解釈などに疑義を生じた場合は、法務部に相談し、助言を受けなければならない。
5 違反についての処置
役員または従業員が、この規範に違反した場合は、取締役会、または人事委員会において事実関係を慎重、かつ適正に審査のうえ、法令および社内規程に則って懲戒する。
付 則
(実施時期)
この規範は、平成○年○月○日から実施する。