海外駐在員安全対策マニュアル
海外駐在員安全対策マニュアルのテキスト
海外駐在員安全対策マニュアル
はじめに
海外で仕事を円滑に進めていくうえで,安全の確保はきわめて重要です。適切な安全対策の実施が,海外駐在員の一つの大きな仕事であることをよく認識することが必要です。
このマニュアルをよく読み,よく理解し,赴任先での安全の確保に努めてください。
1 事務所の安全対策
(1) 事務所の立地
1 警備体制,安全体制のしっかりしている賃貸ビルに事務所を置く。
2 純粋のオフィスビルを選ぶ。商店,レストラン,ゲームセンターなどが入居している雑居ビルは避ける。
3 近くに歓楽街,スラム街のある地域は避ける。
(2) 安全点検
1 毎日,時間を決めずに事務所の安全点検を行う。
2 電話に録音装置が取り付けられていないか,定期的にチェックする。
3 事務所を留守にするときは,火気に十分注意すると同時に,完全に施錠する。
4 夜間,週末には,特に入念に施錠する。
(3)現地採用社員のチェック
1 身元のしっかりしている現地人を採用する。採用に当たっては,身元確認を行う。
2 採用後も,不審な電話や行動がないかどうか見守る。
3 日常のコミュニケーションを密にし,信頼関係の形成に努める。
(4)来訪者のチェック
1 出入口を1ヶ所にし,人の出入りをきちんとチェックする。
2 できる限り「受付」を配置する。
3 来訪者の氏名,来訪目的を確認してから応対する。
4 できる限り,2人以上で来訪者に応対する。
(5)郵便物のチェック
1 差出人不明の小包は受け取らない。
2 不審な小包,手紙などを受け取ったときは,中を開けずに警察や郵便局に通報する。
3 郵便物の抜き取りが行われていないか,定期的にチェックする。
(6) 自動車利用上の注意事項
1 目立たない車を使用する。派手な車,高級な車は使わない。
2 目立つステッカーなどは付けない。
3 定期的に整備点検をし,常に最上のコンディションに保っておく。
4 車を修理するときは,信頼の置ける業者に依頼する。
5 ドア,トランクに施錠する。
6 故障の際の修理道具,スペアタイヤ,パンク応急改修資材,消火器などを積載しておく。
7 燃料タンクに十分な燃料を入れておく。
8 駐車場を利用するときは,できる限り警備員や係員のいるところを利用する。
9 短時間の駐車であっても,ドアをロックする。
10 車を乗り降りするときは,周囲に不審な車や人物がいないかどうか注意する。
11 運転免許証,パスポートなどの重要書類や貴重品を車の中に置いたまま,t外に出ない。重要書類や貴重品は,常に身につけて持ち歩く。
12 車は,できる限り2人以上で乗るようにする。
13 あらかじめ道順や道路事情をよく調べてから出かける。
14 盗難,交通事故などをすべてカバーする自動車総合保険に加入する。
15 運転手を雇用するときは,身元のしっかりしている者を雇用する。また,運転手にガードマンとしての自覚を持たせる。
(7)その他
1 名刺を渡す相手を厳選する。初対面の相手に安易に名刺を渡さない。
2 名刺に自宅の住所,電話番号などを印刷しない。
3 現地社員に対し,「日本人社員の氏名,住所,電話番号などの問い合わせには安易に応じないよう」徹底する。
4 現地社員に対し,「日本人社員の出張予定,行動計画を外部の者に洩らさないよう」徹底する。
5 出勤·退勤の時刻,コース,服装をしばしば変化させる。
6 接待,外食などに利用するレストラン,クラブなどは特定の店にせず,変化させる。
7 レストラン,クラブなどを含め,しばしば利用するところへ行くとき,帰るときは,違った道を利用する。道順を変化させる。
2 私生活上の安全対策
(1)住宅と住宅環境
1 犯罪発生率の低い良好な住宅地を選択する。
2 警備体制,保安体制のしっかりしている集合住宅·マンションに住む。
3 スラム街,繁華街に近い住宅地は避ける。
4 近くに警察署,消防署があるところに住む。
5 使用人を雇うときは,身元のしっかりしている者を雇う。
6 出入口はできる限り少なくする。
7 玄関のドアを二重キーにするなど,施錠を厳重にする。
8 玄関のドアに必ずのぞき穴をつけるとともに,安全チェーンを取り付ける。インターホンを備え付ける。
9 屋外照明灯を設置する。照明灯が切れたら,すぐに新しいものに取り替える。
10 侵入警報装置,非常警報装置を設置する。
11 消火器をすぐに使える場所に置いておく。
(2) 日常の生活と行動
1 近くに住む人(外国人,日本人)と仲良くしておく。
2 周辺の住民の生活水準,ライフスタイルから突出した派手な生活,目立つ行動は慎む。
3 周辺の住民や現地人の反感を買うような言動はしない。
4 危険地域や裏通りには近寄らない。
5 日によって出勤時間,帰宅時間を変化させる。生活時間がワンパターン化しないように努める。
6 同じスーパー,専門店,レストランばかりを使わないようにする。
7 外出するとき,帰宅したときは,近くに不審な人物やクルマがいないかどうか確かめる。
8 夕方や夜間に家を留守にするときは,一部の電気,電灯をつけておく。
9 2,3日以上家を留守にするときは,近所の人に郵便物や新聞などを片
10 自宅の電話番号,住所を電話帳に掲載しない。
11 電話の近くに警察署,消防署など緊急連絡先の電話番号を貼っておく。
(3) 帯同家族への注意事項
1 近くに住む人(外国人,日本人)と仲良くしておく。良好な人間関係を形成しておく。
2 危険地域や裏通りには近寄らない。
3 「助けて」「強盗だ」「火事だ」など,危険や救助を知らせる現地語の表現を覚えておく。
4 来訪者が誰であるかを確認してからドアを開ける。
5 家族の在·不在,行動予定などを来訪者や電話に対して不用意に教えない。教えるときは,相手の氏名を確認する。
6 見知らぬ者から呼び出しの電話があっても応じない。
7 子供の通学には保護者を付ける。同じ学校の親が交替で登校,下校に付き添う。
8 子供の学校にスクールバスがあるときは,スクールバスを利用する。
9 子供に対して,誘拐や交通事故等について日頃から注意や指導をする。
10 子供に対して,遊びに出かけるときは行き先や帰りの時間を親に知らせるよう,徹底する。
11 小さい子供を1人で外出させない。
12 同じ時間に同じ店で買い物をしないようにする。時間をずらしたり,店を替えたりする。
13 夜間の外出はできる限り控える。
(4)非常時への備え
1 近くの人(外国人,日本人)と親しくし,非常の場合に助け合える関係を作っておく。
2 緊急連絡先(会社,警察署,消防署,警備会社,病院,日本大使館·領事館,日本人会,友人,日本の家族など)の電話番号をリストアップしておく。
3 パスポート,保険証書,預金通帳など,大事な書類をひとまとめにして,安全な場所に保管しておく。
4 当分の間の医薬品,食料,飲料水,現金などを用意しておく。
5 短波ラジオ,懐中電灯,電池を用意しておく。
(5) 非常時の対応
1 すぐに緊急連絡先(会社,警察署,消防署,日本大使館·領事館等)へ通報する。
2 冷静に行動する。慌てない。
3 非常時に関する情報を幅広く収集し,行動決定の判断材料とする。
以上